第4回つくば3Eフォーラム会議
フォーラム議長からのご挨拶
2007年の第1回のつくば3Eフォーラム会議から満3年がたちます。この間、環境、エネルギーをめぐる国内と世界の状況は大きく変わりました。 先進国と発展途上国の間で意見の差を残しつつも、世界はグリーン政策に大きく舵をきりました。景気対策で補助金がついたおかげで、太陽光パネル、ハイブリッドカー、省エネ家電などが急速に普及しています。また、環境教育、広報の広まりで、生活のなかでも、リサイクル、省エネ行動が広がっています。2009年11月、鳩山前首相は、国連において、2020年までに温室効果ガスを25%削減する(1990年比)ことを宣言し、また、環境省は、「温室効果ガス2050年80%削減のためのビジョン」を発表しました。この途方もない目標は、どうすれば実現できるでしょうか。現政権は、新成長戦略の目標として、グリーン・イノベーションを掲げていますが、目標を達成するための具体策はまだ見えません。
そんな状況の中で、筑波研究学園都市は、どのような役割を果たさなければならないでしょうか。このあたりで、一度確認しておく必要があると思います。平成18年度から平成22年度までの5年間を対象とする第3期科学技術基本計画において、国の政策として、筑波研究学園都市の大学、研究機関の連携融合を進めること、また国際化を進めることが謳われました。つくば3Eフォーラムは、この国家政策に応えるための議論の結果、環境・エネルギー問題の解決に連携して取り組むことを目的に設置されました。つくば3Eフォーラムでは、4つのタスクフォースを設置して、2030年までにつくば市の排出する二酸化炭素を50%削減する(つくば3E宣言2007)ために、何をしなければならないか、具体的にどんな研究開発、実証実験をしなければならないかについて議論を進め、一部については、実用に向けた実験、実証が進められています。今回の第4回会議では、各タスクフォースの活動状況をご報告いただき、また、2030年のつくばの目標実現を見据えて、今後5年間のロードマップを提示していただくようお願いしました。各タスクフォースが、互いの活動を理解し、切磋琢磨していくきっかけになればと願っています。また、これを機にタスクフォース間の連携が進むことも期待しています。
今回は、 バイオマス・タスクフォースの活動の国際展開として、「アジア・オセアニア藻類イノベーション・サミット」を、つくば3Eフォーラム関連会議として開催します。各国の政府、産業界、研究者が集い、エネルギー、汚水処理、有用物質生産など、藻類の可能性、藻類産業の創成について議論することになっています。この会議は、つくば3Eフォーラムの活動がなければ、実現しなかったものであり、本フォーラムの成果の一つと考えています。同様の活動が、他の研究分野からも次々に出てくることを期待したいと思います。つくば発の活動が、国内のみならず、グローバルに展開していくことが、筑波研究学園都市の連携融合と国際化を進めることにつながると思っています。
つくば市では、環境スタイル行動計画で「実験低炭素タウン」の実施、具体策の策定を進めており、その中の一つが、「低炭素技術開発ショーケース(実験タウンD)~未来の低炭素社会づくりを飛躍的に加速させる最先端技術実証実験のショーケース~」です。つくば3Eフォーラムでは、平成23年度中に、その具体的な姿を提案することにしており、ワーキンググループを設置して、検討しているところです。今回のフォーラムでは、実験タウンDについても議論したいと思います。
みなさまには、今回のフォーラム会議においても、これまで同様、活発なご議論をお願いいたします。
平成22年12月12日
つくば3Eフォーラム議長 井上 勲
第4回 つくば3Eフォーラム会議が開催されました!
毎年の恒例行事となったつくば3Eフォーラム会議が、2010年12月12日に茨城県つくば市の筑波大学大学会館において開催されました。4回目となる今回の会議では、フォーラムの実質的活動を担う4つのタスクフォースの進捗状況や今後5年程度の短期的・具体的ロードマップが示され、またつくば市で計画が進められている低炭素技術開発ショーケース(通称: 実験タウンD)に関する議論が行われました。
午前中のオープニングセッションでは、井上 勲 フォーラム議長による趣旨説明に引き続き、主催者・後援者を代表して小野 晃 筑波研究学園都市交流協議会会長、市原健一 つくば市長、山田信博 筑波大学長、ならびに泉 紳一郎 内閣府政策統括官から、参加者への歓迎の意と本フォーラムに対する激励の言葉が述べられました。毎回の出席となる市原市長や筑波大学副学長在任時に本フォーラムの立ち上げに奔走された泉統括官の挨拶には、短くも長い3年間の歳月の重みが滲み出ていました。
相澤益男 総合科学技術会議議員による基調講演では、来年度から始まる第4期科学技術基本計画の方向性に沿って、これからのつくばにかける期待が披露されました。2010年6月閣議決定の新成長戦略では、強い経済の実現と問題解決型の国家戦略、および新たな需要と雇用の創造ということが謳われていますが、今後の科学技術にはそうした成長戦略の駆動力としての役割が求められています。具体的にはグリーンイノベーションとライフイノベーションの2つが成長を牽引するものとして有望視されており、それを推進するための産学官協働の拠点が必要とされているということです。知と技術が集積されたつくばはまさにそうした拠点となり得るポテンシャルを秘めており、Tsukuba Innovation Arena (TIA) という構想も描かれているとのことでした。
サンドウィッチとコーヒーが提供された昼休憩の時間には、環境教育・バイオマス・交通分野などを中心に計17件のポスター発表&ブース展示がありました。これまでの会議では、それぞれ独立して行われてきた既存の諸活動を紹介して情報を交換し合うという側面が強かったのですが、今回はつくば3Eフォーラムを契機として新たに立ち上げられた活動の発表が多く、この3年間のなかで着実に何かが生まれ、成果を上げつつあるという実感が得られました。
午後の最初のセッションでは、都市構造・交通システムタスクフォースの活動としてカーシェアリング・エコドライブ講習会ほか大学・研究所における各種取り組み、太陽エネルギータスクフォースの活動としてつくば市における太陽光発電・太陽熱利用の現況と二酸化炭素排出量削減の試算結果などが紹介されました。また、ゴーゴーバイオマスの手拍子で始まったバイオマスタスクフォースの報告では、つくば環境スタイル行動計画の施策群やワークショップ・見学会・出前授業などの多彩な活動状況とともに明確なミッションを設定した具体的なロードマップが紹介されました。そして、エネルギーシステム・評価タスクフォースの報告では、低炭素社会評価法の枠組みや”見える化″の工夫といった活動内容がつくば市・茨城県を事例とした豊富な分析結果とともに紹介されました。
午後の2番目のセッションでは、実験タウンDのコンセプトと検討状況が報告されました。ちなみに、名称にある”D″は、予定されている4段階の実スケールショーケースの中で最も先端的な技術を集めたものであることを意味しています。その目的はこれから導入されるべき新技術の見える化にあると言えますが、単に要素技術を寄せ集めただけでなく、それらを統合的に利用しながら全体としての最適化を図るという理念が活かされる予定であるとのことです。課題としてコスト負担などの問題もありますが、産学官協働事業が様々なところで実際に動き出しつつあり、世界に誇りうるものが期待できそうです。
最後のセッションは「2030年の目標に向けて」と題したパネルディスカッションです。10名のパネリストがこれまでの活動を振り返りながら総括を行い、今後への課題を明確にしてゆきました。その一部を要約すると次のようです。
つくば研究学園都市は実験都市・未来都市のイメージを持って生れており、知の集積効果を有したプラットフォームとして機能することがそもそもの使命であったと言える。お互いがライバルでもある研究機関を有機的に結び付けてゆくのは容易ではないが、筑波大学がハブとなることでうまく機能するようになってきた。この流れによって、つくば市では行政に変化が表れ、筑波大の学生も良い方向に変わってきた。一方で、一般市民への波及効果は十分ではなく、まだまだこれからという感じがある。短期的なコスト感覚だけでなくライフサイクルで考えることの大切さを啓発してゆくという点も含めて、市民との接点を深める必要がある。一方で、縦割り社会の現実と向き合いながらも各セクターの活動をうまくコーディネートし、予算を獲得してゆく努力も必要である。この点については、現在、提案準備を進めている国際戦略総合特区(仮称)が実現すると様々な面で事業が円滑に回るようになる。各タスクフォースの活動に関連した部分では、研究と普及の乖離、事業化・製品化の速度、専従職員の不足といった問題を解消しつつ、産業構造の転換や新産業の育成を図ってゆくことが鍵となる。協働作業は計画段階から一緒にやらないと面白さが薄れてしまうので、今後もなお一層市民との交流を密にする努力が必要である。
こうしたパネリストによる発言の後、フロアから質問・コメントが寄せられました。そして、予定時間を30分近く超過するほど白熱した議論を経て、第4回フォーラム会議は盛会裏に幕を閉じました。
記録・資料
日 程 | 2010年12月12日 (日) 10:00~18:00 |
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場 所 | 筑波大学大学会館 |
参加費 | 無料 |
主 催 | つくば3Eフォーラム委員会(筑波研究学園都市交流協議会), 筑波大学, 内閣府 |
後 援 | つくば市, 国立環境研究所, 物質・材料研究機構, 産業技術総合研究所, 農業・食品産業技術総合研究機構, 文部科学省, 茨城県, 経済産業省, 環境省, 農林水産省, 国土交通省 |
資 料 | 報告書(27MB) |
プログラム
10:00-10:50 司会 : |
開会挨拶 |
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11:00-11:50 【基調講演】 |
『つくばに期待すること ~第4期科学技術基本計画~』 相澤益男 総合科学技術会議 議員 |
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11:50-13:20 | ポスターセッション & 展示(昼休憩:軽食・コーヒー有り |
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13:20-15:20 司会 : |
『都市構造・交通システム タスクフォース』 井上 勲 教授・渡邉 信 教授(筑波大学) |
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『太陽エネルギー タスクフォース』 松原浩司(産業技術総合研究所) |
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『バイオマス タスクフォース』 柚山義人(農研機構・農村工学研究所) |
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『エネルギーシステム・評価 タスクフォース』 内山洋司(筑波大学) |
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15:30-16:00 司会 : 福島武彦 (筑波大学) |
『20年後のつくばを創る ~実験タウンDのコンセプトについて~』 | |
16:00-17:30 コーディネーター : |
『2030年の目標に向けて』 パネリスト(五十音順)
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18:00-20:00【懇親会】 | 会場:大学会館プラザ |
ポスター発表一覧
No. | 発表者 | 所属機関 | ポスタータイトル |
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P1 | 加藤秀樹・松橋啓介・近藤美則・小林伸治 | 国立環境研究所 社会環境システム研究領域 交通・都市環境研究室 | GPSデータを活用した簡易なエコドライブ評価手法の開発 |
P2 | 「つくば3Eフォーラム委員会」バイオマスタスクフォース | 筑波研究学園都市交流協議会 | つくば3Eフォーラム・バイオマスタスクフォースの取り組み |
P3 | 資源循環システム研究チーム | 農研機構 農村工学研究所 | 資源の地産地消に資するメタン発酵システムの実証 |
P4 | 小長谷瑞木・原 昌彬・草野史興 | Plus-E; イー・アンド・イー ソリューションズ(株), (株)電通テック, ビルコム(株) | つくば市地産地消推進&PR事業 |
P5 | 創価大学 | 藻類を使った環境浄化、有用物質の生産そしてエネルギー回収 | |
P6 | 認定NPO法人 宍塚の自然と歴史の会 | 宍塚の里山 | |
P7 | エコシティ推進グループ | 筑波大学 | 筑波大学エコドライブ教習会 |
P8 | エコシティ推進グループ | 筑波大学 | 環境教育:筑波大学における取り組み |
P9 | 辻村真貴・若杉なおみ・遠藤 崇浩・孫 暁剛 | 筑波大学大学院生命環境科学研究科 | 筑波大学における高度環境人材・環境ディプロマティックリーダー(EDL)の育成プログラムについて |
P10 | 次世代環境教育ワーキンググループ | 筑波大学 | 次世代環境教育カリキュラムの作成とつくば市立小中学校における試行実践 |
P11 | 内海真生・岩本浩二・羽田野真由美・西川瑛海 | 筑波大学生命環境科学研究科, 筑波大学企画室, 3Ecafe プロジェクトチーム | オレゴン州ポートランド市視察報告およびつくば市への提言 |
P12 | 3Ecafe プロジェクトチーム | 3Ecafe プロジェクトチーム紹介 | |
P13 | つくば市 | つくば環境スタイル | |
B1 | 新井佑佳・佐無田啓・田村聡・溝口勝哉・内山洋司・岡島敬一 | 筑波大学大学院 システム情報工学研究科 リスク工学専攻 | 低炭素社会構築に向けて何ができるか?―地域におけるCO2排出の現状と再生可能エネルギー導入効果― |
B2 | TIEES | TIEES(筑波学際環境教育セミナー)-「我が学問と環境教育」-への招待 | |
B3 | エコシティ推進グループ | 筑波大学 | エコドライブ講習会inつくば3Eフォーラム会議 |
B4 | 株式会社ネオ・モルガン研究所 | 微細藻類を含む産業用微生物の育種・品種改良の専門企業 |