第1回つくば3Eフォーラム会議
フォーラム議長からのご挨拶
ご存知のように、本年2月にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第4次報告書において、地球温暖化が進行している可能性がかなり高いことが報告されました。これによって、地球温暖化が実質的に進行していることが国際的な認識として定着してまいりました。温暖化による影響は、昨今の連発している世界各地の異常気象や北極とグリーンランドの氷の溶解などに現れ、社会全般に大きな不安を抱かせるに至っています。日本でも異常な猛暑や大型台風の襲来、そして早すぎる積雪などが温暖化の影響として取り上げられています。
そんな中で、今年5月にドイツのハイリゲンダムで開催されたG8サミットにおいて、安倍前首相の主導で、2050年までに温室効果ガスを半減させるCool Earth 50が採択されました。国際的にも地球温暖化への認識が進み、その防止策の策定と実行への期待が膨らんでいます。科学技術に関わる国内の各セクションに対して、具体的な対応が求められているところです。しかしながら、こうした状況にあって、国内の大学、研究機関では、国民から見える形の取り組みがなされていないのが現状です。当然ながら、巨額の費用を投入して建設されたわが国唯一の研究学園都市である筑波研究学園都市に対しては、とりわけ組織的な取り組みが求められています。筑波研究学園都市の大学、研究機関は、人類が直面しているこの重要課題に対して何らかのメッセージを発信し、具体的なアクションを起こす社会的責務があると考えます。
本フォーラムは、こうした現状認識を共有する筑波研究学園都市の大学、研究機関、自治体の主体的取り組みとして組織されたものです。関連機関が連携を図り、それぞれが有する知恵と技術を集約することで、低エネルギー社会の実現に向けて具体的活動を開始する契機とすべく立案、企画しました。2007年12月15-16日に開催される第1回つくば3Eフォーラム会議では、地球温暖化の現状を把握し、省エネルギー技術、再生可能エネルギー技術開発のための使用可能な要素技術の洗い出しを行い、さらに筑波研究学園都市をエコライフモデル都市として再構築する方策を検討することで、温室効果ガス削減の可能性を探るつくばモデル構築のためのキックオフとします。 各位におかれましては、本フォーラムの主旨に是非ともご理解、ご賛同をいただき、筑波研究学園都市の新たな連携に向けてフォーラムへの参加・お力添えをお願いする次第です。
平成19年11月26日
つくば3Eフォーラム議長 井上 勲
第1回 つくば3Eフォーラム開催!
岩崎学長による挨拶
第1回つくば3Eフォーラム会議が、2007年12月15日(土)-16日(日)の2日間にわたり、筑波大学大学会館ホールにて開催されました。この会議は、地球温暖化の主な原因である二酸化炭素の排出量半減とこれに関連した省エネ都市づくりに向けて、筑波研究学園都市内の諸研究機関が英知と技術を結集して取り組むためのキックオフミーティングと位置づけられるもので、内閣府ほか、茨城県・つくば市などからの協力も得て華やかに開幕しました。
井上勲 フォーラム議長(生命環境科学研究科)による開会挨拶に引き続いて、岸田文雄 科学技術政策担当大臣からのビデオメッセージがまず紹介され、橋本昌 茨城県知事(代理:馬場清康 生活環境部部長)、岡田久司 つくば市副市長、ならびに筑波研究学園都市交流協議会長を兼務する岩崎洋一 筑波大学長からも大いなる期待と決意が述べられました。
相澤議員による特別講演
相澤益男 総合科学技術会議議員による特別講演では、第3期科学技術基本計画における環境・エネルギー戦略と革新的技術開発の重要性が強調され、つくば発のイノベーションに対する熱い激励の言葉をいただきました。また、3つのセッションで構成された一般講演部門では、現状の分析や各種取り組みの紹介から課題の明確化と今後への展望まで、多彩なプレゼンがつくば内外の20人の講演者によってなされました。さらに、ポスターセッション部門では、現在進行形の様々な研究・教育・啓蒙活動の紹介や低炭素社会の実現に向けた萌芽的アイデアの披露がなされ、10組の発表者・グループが表彰されました。
井上議長による宣言
パネルディスカッション(司会:渡邉信 筑波大学教授)では、様々なバックグラウンドを持つ7名のパネリストがそれぞれの専門的知識や経験にもとづいて短期的課題や長期的展望を提示し、それらに対してフロアから活発な意見・提案が出されました。特に、つくば市レベルでの炭素収支評価や地域住民の参画と合意形成など、重要な課題が浮き彫りにされたほか、低炭素社会を構築する次世代の担い手を育成することの重要性が改めてクローズアップされました。
有意義なディスカッションを経て、つくば3Eフォーラム実行委員会によって起草された『つくば3E宣言2007』が井上議長によって読み上げられ、大きな拍手とともに成功裡に閉幕を迎えました。なお、本フォーラムは、開催日夕方のNHKニュースをはじめ、準備段階から各種マスメディアで取り上げられるなど多大な反響を呼んでおり、社会からの期待に応えるべく、関連諸機関の協力体制の拡充が望まれるところです。
記録・資料
日 程 | 2007年12月15日 (土), 16日(日) |
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場 所 | 筑波大学大学会館ホール |
主 催 | 筑波大学、つくば3Eフォーラム実行委員会、筑波研究学園都市交流協議会、内閣府 |
協 賛 | 産業技術総合研究所、国立環境研究所、物質・材料研究機構、茨城県、つくば市 |
報告書 | 第1回つくば3Eフォーラム 報告書(24MB) |
プログラム 総合司会 : 福島 武彦 (筑波大学)
開会挨拶 | 井上 勲 フォーラム議長 (筑波大学) | ||
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ビデオメッセージ | 岸田 文雄 科学技術政策担当大臣 | ||
挨 拶 |
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趣旨説明 | 井上 勲 フォーラム議長 (筑波大学) | ||
特別講演 | 二酸化炭素排出50%削減にむけた科学技術的戦略課題 相澤 益男 総合科学技術会議議員 |
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【セッション1】 座長: |
1. 地球温暖化への取り組み |
地球温暖化問題への文部科学省の取り組み | 青山 伸 (文部科学省大臣官房審議官) |
温暖化対策の国際的取り組み | 三村 信男 (茨城大学) | ||
地球環境観測: GOSATの取り組み | 井上 元 (名古屋大学) 浜崎 敬 (宇宙航空研究開発機構) |
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地球温暖化の影響と適応国立環境研究所 | 原沢 英夫 (国立環境研究所) | ||
低炭素社会の実現にむけたシナリオ開発 | 甲斐沼 美紀子(国立環境研究所) | ||
2. エネルギー資源の今後の動向 |
エネルギー資源の現状と展望 | 神本 正行 (産業技術総合研究所) | |
エネルギー資源・環境問題と技術選択 | 内山 洋司 (筑波大学) | ||
【セッション2】 座長: |
1. 燃料電池技術の現状と将来 |
燃料電池技術の現状と展望 | 大和田野 芳郎 (産業技術総合研究所) |
高窒素ステンレス鋼のPEFC用金属セパレータへの適用可能性 | 片田 康行 (物質・材料研究機構) | ||
2. バイオ燃料技術の現状と将来 |
農業系バイオマスによる国産バイオ燃料生産に関する課題 | 上田 達己 (農業・食品産業技術総合研究機構) | |
木質系バイオ燃料技術 | 伊神 裕司 (森林総合研究所) | ||
藻類バイオマスエネルギー技術の展望 | 渡邉 信 (筑波大学) | ||
3. 太陽電池技術の現状と将来 |
太陽光発電技術の現状と展望 | 作田 宏一 (産業技術総合研究所) | |
4. 運輸技術 |
電気自動車, 燃料電池自動車の開発動向 | 荻野 法一 (日本自動車研究所) | |
【セッション3】 座長 : |
持続可能都市のための都市構造設計 | 鈴木 勉 (筑波大学) | |
2050年までに日本の運輸部門CO2を約70%削減する対策について | 松橋 啓介 (国立環境研究所) | ||
バイオマスタウンつくばを目指して | 柚山 義人 (農業・食品産業技術総合研究機構) | ||
持続可能なソリューションに至るプロセスの枠組み | 鈴木 敦 (民間都市開発推進機構) | ||
茨城県の取り組み | 福地 伸 (茨城県企画部) | ||
つくば市の概要と環境対策 | 飯野 哲雄 (つくば市市長公室) | ||
パネルディスカッション 座長 : |
2030年までにつくば市でCO2排出50%削減をいかに実現させるか 司会 : 渡邉 信 (筑波大学) |
パネリスト: 内山 洋司 (筑波大学) 大和田野 芳郎 (産業技術総合研究所) 鈴木 敦 (民間都市開発推進機構) 田中 一宣 (JST研究戦略開発センター) 谷口 綾子 (筑波大学) 原沢 英夫 (国立環境研究所) 村田 佳壽子 (日本環境ジャーナリストの会) |
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つくば3E宣言2007 | |||
閉会挨拶 | 泉 紳一郎 (筑波大学理事・副学長) | ||
ポスターセッション |